一瞬でバックを取り返してくれた男性

私はスウ。今電車に乗っている。これから大学に行かなければならないのだけれど、今日は講義が一つしかないので少し余裕がある。だからこうして日記を書いている。
「あのー」
隣に座っていたおじさんに声をかけられた。
「なんですか?」
「すみません、お手洗いってどこにありますかね? この辺の人じゃないものでよく分からなくて……」
おじさんは困った顔をしている。私も実はこの駅に来るのは初めてなのだけれど、トイレの場所くらい知っている。ここは都会ではないけれど田舎でもない。駅の構内にはちゃんとコンビニだってあるし、自動販売機もある。
「あ、分かりますよ! 案内しますね!」
私はそう言って席を立った。
「ここを真っ直ぐ行って突き当たりです」
私は親切にも道を教えてあげた。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、どういたしまして」
「いやぁ、本当に助かりました。あなたのような人がいて良かったですよ」
「そんなことないですよ~」
なんて会話をしながら私たちは別れた。
そして電車が来るまであと三分というところで、私は異変に気付いた。
私のバッグがない!! さっきのおじさんだわ……。すぐに分かった。
どうしよう……、どうしよう……。このままじゃ大学に行けないし、家に帰れないじゃない! 私が途方に暮れていると、後ろから声をかけられた。
「あのー、大丈夫ですか?」振り向くとそこには若い男性が立っていた。
「えっと、はい、まぁ……」
私は曖昧な返事をした。正直なところ、全く大丈夫ではなかったからだ。
「何かあったんですか?」
「じ、実は……」
私は事情を説明した。すると彼は言った。
「なるほど。それなら僕に任せてください。絶対に取り返してみせます」
「本当ですか!? でもどうやって……?」
「こうやってです」
彼がそう言うと、次の瞬間、彼の姿は消えていた。
「えっ……?」
私は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
消えた……。目の前にいたはずの彼が、忽然と姿を消したのだ。
私はしばらくその場に立ち尽くしていた。そしてしばらくして我に帰った。
そうだ、早く彼を探し出さなければならない。しかしどこに行ったらいいだろうか……。
その時だった。突然、背後から誰かに声をかけられた。
「あのー、すみません」
振り返るとそこには先ほどの男性がいた。
「あっ!!」
「はい、これあなたのバッグでしょう?」そう言って彼はバッグを差し出した。
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして」
彼は笑顔で答えた。
「ところでどうして私のバッグのことが分かったんですか? それにさっきの姿って……」
「ああ、それはですね……」
彼は説明を始めた。が難しくて理解出来なかった。とりあえず彼は超能力者だということだけ分かった。
「そろそろ電車が来ちゃいますよ」
「あっ! ホントだ! 急いで帰らないと! 本当にありがとうございました! このお礼は必ずさせていただきます!」
「それでは十万円払ってください。」
「えぇ!? なんでお金が必要なんですか?」
「そりゃもちろん、タダ働きするのは嫌だからですよ。これはビジネスなのです」
「わかりました!」
私はしぶしぶATMに行って十万円を下ろした。
「これで良いでしょうか?」
「ええ、十分です。確かに受け取りました。それではまた会いましょう」
彼はそう言い残して去って行った。
そして、このバッグに十万円を払う価値がないことに気づいた。

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