2人より3人のほうが楽しいよ

私はスウ。今日はマサコと海に行く予定だ。
朝からマサコが車で迎えに来てくれることになっているので、私はそわそわして落ち着かない。
「うーん」
私は鏡の前でポーズをとってみた。昨日買ったばかりの水着を着て、ちょっとセクシーな感じにしてみたがどうだろう?これならマサコもきっと喜んでくれるはずだ。
時計を見るともう十一時を過ぎていた。約束の時間まであと一時間しかない。
「早く来ないかなあ」
そう呟いて窓の外を見たときだった。道路に赤い車が停まった。その車の運転席にはマサコの姿があった。
「あれ?」
と思った瞬間、助手席のドアが開いて男が降りてきた。そして私に向かって手を振っている。
「嘘……」
男の顔を見て愕然とした。それはなんとコウジだったのだ。
「何しに来たんだよ!」
怒りで震える声を必死に抑えて私は言った。
「いやあ、たまたま近くを通りかかったんでさあ。だから一緒にドライブでもしようかと思ってね」コウジは悪びれた様子もなく言う。
「冗談じゃないよ!あんたが来ていいところじゃないんだってば!」
「まあまあ、そんなこと言わずに。ほら乗った乗った」
コウジは私の肩を抱くようにして後部座席に押し込んだ。続いてマサコが乗り込んでくる。
「ちょっと、マサコまでどういうつもり!?」
私が叫ぶとマサコはすまなさそうな顔をして言った。
「ごめんなさいね。実はこの人がどうしてもっていうもんで……」
「3人のほうが楽しいだろ」
「うるさいなあ。帰れよ」
「そういうわけにもいかないんですよねえ」
コウジはニヤリと笑って言う。
「今日一日、俺はあなたたちの奴隷ですから」
「えっ……?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
「今、なんて言ったの?」
「だから、俺のことを好きにしちゃってくださいって言ってるんです」
「ふざけたこと言わないでよ!」
「ふざけてなんかいないですよお」
コウジは平気な顔で言う。
「じゃあ帰ってください」
「仕方ないね。帰るか」
そう言ってコウジは車から降りて帰っていった。
「何考えてるんだよあいつは……」
呆れてものが言えないとはこういうことだ。
「本当に申し訳ありません」
マサコが深々と頭を下げる。
「いいよ、いいよ。海に行きましょう」
あんな奴のために時間を無駄にしたくはない。
「はい、出発します」
マサコの運転する車は海を目指して走り出した。
海岸に着くと私たちは早速服を脱ぎ捨て水着に着替えた。太陽の下で見る私の肌は透き通るように白く輝いている。
「綺麗ですねえ」
マサコが感心したように言った。
「ありがとうございます」
「ほんと、素敵ですよ」
マサコも褒めてくれる。
「いやあ、それほどでもないですよ」
私は照れ笑いを浮かべながら言った。
「あの、ところでお願いがあるんですけど……」
「なんですか?」
「二人だけで写真を撮ろうよ」
「写真?どうしてまた……」
「記念に残したいなって思って……」
「ああ、そういうことでしたら構いませんよ」
「本当ですか!嬉しい!」
マサコは大喜びしている。こんなことを頼んでくるなんて可愛いところもあるじゃないかと思いつつ私は笑顔を向けた。するとマサコはバッグの中からカメラを取り出した。
「はいチーズ!」
カシャッというシャッター音とともに眩しい光が私に降り注ぐ。その瞬間、私はハッとして固まってしまった。フラッシュのせいで一瞬見えたのだが、マサコの後ろに誰かがいたような気がしたのだ。しかし辺りを見回しても誰もいない。きっと目の錯覚だろう。私は気を取り直して海に駆けていった。
波打ち際ではしゃいでいると、ふと視線を感じた。振り向いてもやはりそこには誰の姿もない。ただ青い空と白い雲が広がっているだけだ。私は少し気味が悪くなった。
「どうしました?」
マサコが心配そうに声をかけてくる。
「いえ、なんでもないです」
私は慌てて作り笑いをして答えた。それからはなるべく後ろを振り向かないようにして泳いだり砂遊びをしたりして過ごした。
夕方になり、そろそろ帰り支度を始めようかという頃になった。
私は背筋を冷たい手で撫でられたような寒けを覚えた。何か嫌な予感がする……。そのとき突然背後で声が聞こえた。
「見つけたぜ」
振り返るとそこにコウジの姿があった。
「今日一日、貴方は私の奴隷よ。今すぐ帰って」
「わかったよ」
コウジはあっさりと引き下がる。拍子抜けするほど簡単に帰ったので私はかえって不安になった。
「マサコ、今日は楽しかったね」
「今度はコウジも一緒に連れてきましょう」
「一緒に来たかったのかよ!」

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