私はスウだ。
私には彼氏のタカシがいる。
彼はとてもかっこいい。
そしてお金も持っている。
でも私の両親は反対している。
「あんなろくでなしと付き合うな」
って言っている。
私はその言葉が嫌いだ。
だってタカシは優しいし、私を大切にしてくれているから。だから私は両親にこう言う。
「うるさい! 黙れ!」
そうすると両親はいつも言い返す。
「お前みたいな奴に育てた覚えはない」
ってね。
じゃあなんで育ててくれたんだろう? 私は不思議でしょうがないよ。
さて今日は久しぶりにデートをすることになった。
待ち合わせ場所に早く着いた私はタカシを待つことにした。
しばらく待っているとタカシが来た。
私は笑顔で挨拶をした。
「やぁ、おはようタカシ」
しかしタカシは無言だった。
「あれ?」
私が首を傾げているとタカシが言った。
「誰ですかあなた?」
私は唖然とした。
「えっ……?」
「いや、だからあなた誰です? 僕の恋人に似てますけど違う人ですよね? まあいいか。行きましょう」
私は必死になって言った。
「待って! ねぇ待って! どういうこと!?」
「どうしました?」
「いや、あの……」
私は困惑していた。
なぜいきなりこんなことを言われているのか分からなかったからだ。
するとタカシが答えた。
「あーそういうことですかね? すみません。ちょっと記憶喪失になったみたいでして……。でも大丈夫です。すぐに思い出しますから」
「ちょ、ちょっと待ってよ! ねぇ! ねぇったら!!」
「それでは失礼します」
タカシは去っていった。私はショックで倒れてしまった。
それからしばらくして目を覚ました。
そして病院に行ってみた。
診断結果は軽い脳震盪ということらしい。
しかし頭を打ったため精密検査を受けた方がいいと言われた。
私はその指示に従って入院することにした。
しばらくベッドの上で過ごしていると誰かが入ってきた。
それはタカシだった。
「おっ! 元気そうだな!」
私は嬉しくなって抱きついた。
「タカシ!! 」
「うわっ!? びっくりしたぁ」
「会いたかったよぉ〜」
「おいおい泣くなって。俺はここにいるから安心しろ」
「うん」
その後、お医者さんが来たので診察してもらうことになった。
まずは簡単な問診が行われた。
「最近何か変わったことはありませんでしたか?」
「いえ、特にありません」
「最近どこかへ行ったりとかは?」
「はい。昨日は友達の家に行きました」
「そうですか。ところであなたの彼氏について教えてくれませんか?」
「あっ、はい。えっと名前は……」
そこまで言って気付いた。
タカシの名前が出てこないことに。
どうしてだろう? 今まで普通に呼んでいたはずなのに名前が出てこなくなってしまった。
仕方ないので他の質問に答えることにした。
「それであなたはどこに住んでいるんですか?」
「はい。○○市です」
「○○市ですね。分かりました」
「あの〜先生? そろそろよろしいでしょうか?」
「ああ、そうですね。最後に1つだけいいですか?」
「はい。なんでしょう?」
「あなたにとって彼氏はどんな存在ですか?」
「大切な人です。世界でいちばん大好きな人です」
「なるほどありがとうございます。もう戻ってもらって結構ですよ」
「はい。失礼しました」
私は病室に戻った。するとタカシがいた。
「よう、調子はどうだ?」
「んーぼちぼちかな? それより私のこと分かる?」
「もちろんだ。スウだよな?」
「よかった。じゃあ私の名前を教えてくれる?」
「えっ? 何言ってんだよ? スウだろ?」
「…………えっ?」
どうやら自分のことが分からないようだ。
しかし私の名前はスウではない。
私はそこでようやく理解した。
私は記憶喪失になってしまったのだ。
自分の名前が思い出せないのはそのせいだろう。
しかしそんな私にタカシが言った。
「大丈夫だ。俺が守ってやるから心配するな」
「タカシ……」
私は涙が出そうになった。
なんて優しいんだろうと思った。
やっぱりこの人は私の自慢の彼氏だ。
それから数日後、退院することができた。
家に帰ると両親が待っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「それでどうだった?」
「別に何も問題はなかったよ」
「そうですか。それは良かった」
「ねぇお母さん、私って誰なの?」
「何を言っているんだ? お前は私の娘じゃないか」
「でも私は自分の親の名前を言えないし、それに恋人の名前も忘れちゃったんだけど?」
「えっ……?」
両親は驚いていた。
私は続けて言った。
「 記憶喪失になっちゃったみたいなの」
「えっ……?」
両親は再び驚いた。
私はさらに続けた。
「ねぇ、私は誰? 私は誰の子? 私は誰と付き合っているの?」
「そ、それは……」
「お願い! 教えて!」
私は泣きながら懇願した。
すると母親が言った。
「……あなたは私とお父さんの子供です。そしてあなたの恋人は……」
「うん……」
私は緊張しながら待った。
しかし母親はこう言った。
「あなたの恋人はタカシ君という方です」
「タカシ!?」
私はびっくりしてしまった。
まさかタカシが私の彼氏だったとは……。
でもなぜだろう? なぜか違和感がある。
でもまあいいか。
今はそれよりも大事なことがある。
「ねぇ、タカシってどんな人?」
「そうね……。とても優しくて頼りになる人よ」
「そうなんだ。早く会ってみたいよ」
「そうね。早く会いましょうね」
私はタカシに会うために準備を始めた。
そしてとうとうその日が来た。
タカシがやってきたのだ。
「初めましてタカシさん。私はスウと言います。よろしくお願いします」
私は笑顔で挨拶をした。
するとタカシが言った。
「こちらこそよろしく」
タカシも微笑み返してくれた。
「それとタカシさんのことを教えてください」
「えっ? いや、ちょっと……」
「ダメですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「ならいいですよね?」
「う〜ん、分かったよ」
こうして私はタカシのことを色々と知った。
まずは年齢だ。
なんと彼は30歳で私と同じ年齢だ。
次に職業だ。
なんと彼の仕事は医者だった。
しかも凄腕らしい。
さすが私の彼氏だと感心した。
あとは趣味。
趣味はゲームらしい。
特技は絵を描くことだそうだ。
へぇ〜、意外だなぁと思った。
私はタカシに言った。
「ねぇ、今度デートしようよ」
「えっ?」
「嫌?」
「い、いや、そんなことはないぞ」
「やった〜」私は嬉しくなって飛び跳ねた。
タカシは照れ臭そうにしている。
そんなタカシを見てると可愛く思えた。
「それじゃあ決まりだね」
「ああ、いいよ」
「ふふ、楽しみにしてる」
その後、私たちはたくさん話をして別れた。
次のデートを待ち遠しく思いながら。
記憶喪失になっても好きでいます
作品