宝くじのプロを目指そうかな
私はスウだ。
今日は友達のマサコと宝くじを買いに行く予定だ。
二人で宝くじを買うと必ず当たるというジンクスがあるのだ。
だから、二人とも必ず一等を当ててやろうと思っている。
「ねえ、マサコ、今日の勝負服は何にしようか」
私たちはいつもおしゃれをしてくることにしている。そうすると、運がついてくるような気がするからだ。
「今日はね、これなんだけど……どう?」
マサコは薄いピンクのセーターにジーンズを合わせている。
「いいよ! すごく似合ってる!」
「でしょ? 私も気に入ってるんだ」
マサコとは家が近所なので、よく一緒に遊んでいる。マサコは私の一番の親友なのだ。
「じゃあ行こうか」
私たちは電車に乗って駅前まで行った。駅の近くに宝くじ売り場はあるはずだ。
「あった、ここだよ!」そこにはたくさんの人が並んでいた。みんな私たちと同じように宝くじを買っているようだ。
「すごい人だねー」
私たちは最後尾に並んだ。並んでいる人たちを見てみると、男性が多いようだった。
「マサコ、なんか男ばっかりじゃない?」
「そうだね。でも大丈夫、きっと当たるから」
しばらくして、前の方に進んでいった。そしていよいよ自分たちの番になった。
「いらっしゃいませっ! 何枚ですか?」
店員さんが愛想良く話しかけてきた。
「えっと……10枚ください」
私は緊張してうまく喋れなかった。
「はい、わかりました。ではこちらへどうぞ」
私たちは番号が書かれた紙を受け取った。
「当たってると良いね」
「うん、絶対に当たってるよ!」
私たちはドキドキしながら結果を確認した。
「うわぁっ!! やったよマサコ!!」
「ほんと!? 見せて見せて!!」
私たちは興奮した様子で顔を見合わせた。
「3等、100万円です!おめでとうございます!!」
信じられない。本当に当たったのだ。
「50万ずつだね」
「うん。これで大学辞めなくて済むかも……」
私たちは喜びを分かち合った。周りの人も私たちのことを祝福してくれていた。
「こんな大金を一度に見るのは初めてだよ」
「あたしも初めて。ちょっと怖いくらい」
私たちはそのお金を持って家に帰ることにした。早く銀行に行って預けたい。
「じゃあまた明日学校で会おうね」
「うん、バイバーイ!」
私たちは駅で別れてそれぞれ帰路についた。
家に帰って貯金をするために通帳を探した。
しかしなかなか見つからない。
(あれ?おかしいな)
私は家中を探してみたがどこにもなかった。そんなはずはないと思いながら自分の部屋に戻った時だった。
その時、家のチャイムが鳴る音が聞こえてきた。
誰か来たのだろうか。私は玄関に向かった。ドアを開けるとそこには見知らぬ男が立っていた。男はスーツを着ていて、手には鞄を持っていた。
「こんにちは。突然すみません、私はこういう者なのですが……」
差し出された名刺を見ると、そこには『宝くじ販売促進課』という文字があった。
「あの……うちに何か用でしょうか?」
「はい、あなたはスウさんですね?」
なぜこの人は私の名前を知っているんだろうか。不思議に思っていると、その男性はこう続けた。
「単刀直入に申し上げます。あなたは今宝くじに当選されましたよね?」
「は、はい、確かに当たりましたけど……」
「良かった。実は我々宝くじ販売促進課は、当選した方々にインタビューをしているんです」
そういうことだったのか。だからうちに来たんだ。
「なるほど。それで私のところにも来てくれたわけですか」
「はい。それでは早速ですが、いくつか質問させてください」
それから彼はいくつかの質問をした。
「ありがとうございました。これでインタビューを終了させていただきます」
どうやら終わったようだ。私はホッとしていた。
「いえ、こちらこそわざわざ来てくださってありがとうございます」
「ところで、スウさんの持っているそのお金についてなのですが……」
「えっ?」
もしかして取り上げられてしまうのだろうか。私は焦った。
「私たちが責任を持って預かります。よろしいですか?」
「えっと……それは困ります。まだ使い道を決めてないので」
「そうですか。わかりました。また後日にお伺いします」
それだけ言って男は帰っていった。私は不安を抱えながらも部屋に戻っていった。
「はぁ……疲れた」
そして通帳を探すがどこに置いたか覚えていない。
「うーん、まあいっか。そのうち見つかるだろうし」
そう思ってベッドの上に寝転ぶ。すると眠気が襲ってきた。今日はとても嬉しかったからな。
そのまま眠りに落ちてしまった。………………
目が覚めるともう夜になっていた。部屋の中は真っ暗だ。
「あっ、そうだ! 宝くじ……」
急いで起き上がって確認する。
「よかった〜ちゃんとあるよ〜」
安心した途端、空腹感に襲われた。冷蔵庫の中を確認する。
「何もないや。買い物行かなきゃ」
私は近くのコンビニへ向かった。
(何買おっかなー)
適当にお菓子を選んでレジへ向かう。
「お会計490円になります」
「ちょうどでお願いしまーす」
「かしこまりました。10円のお返しです」
私は計算を間違えていた。
「レシートはいらないです!」
店員さんは何も言わずに微笑んでいた。恥ずかしい……。
私は早足で家に帰った。
そして、夕食の準備を始めた。
「よし、できた!」
今日のメニューはカレーライスだ。
我ながらうまく作れたと思う。
「いっただっきまーす♪」
一人で食べる食事は少し寂しい気もするが、これは仕方のないことだ。
「ごちそーさま!」
食器を流し台に置いて部屋に戻る。
「通帳どこだろう?」
私は机の下などを探していた。
「あれ?ここじゃないのかな?」
もう一度探してみる。
今度はタンスの引き出しを調べてみた。
「あった!」
やっと見つけた。これで一安心だ。
「明日銀行行って預けてこよ」
次の日、学校が終わった後に銀行へ行った。
「すみませーん、50万円を貯金したいんですけど」
「はい、こちらへどうぞ」
窓口で手続きをする。
「お待たせしました。ではお受け取りください」
通帳を受け取って銀行を出た。
これでとりあえずは大丈夫なはずだ。
家に帰る途中、ふと思ったことがあった。
「そういえば昨日のあの人何だったんだろう?」
宝くじ販売促進課と言っていた。何か特別なことでもあるのだろうか。そんなことを考えているうちに家に着いた。
「ただいまー!」
返事はない。いつも通り両親は仕事に出かけているようだ。
テレビを見ていると宝くじ特集で盛り上がっているようだった。
『当選金を受け取った人達の喜びの声をお届けします!』
「おおっ、凄いなあ……」
次の瞬間、私の顔がテレビで映った。
宝くじ販売促進課から受けた取材だ。
『いやぁ、本当に夢みたいですよ』
『こんな大金を一度に見るなんて』
『信じられませんよね』
『本当に当たったんですよね?』
『はい、間違いありません』
『それではインタビューを終了します』
『ありがとうございました』
そこで映像が終わった。
「えええぇ!?」
思わず叫んでしまった。まさか自分がテレビに出演するとは思っていなかったからだ。
「これってもしかしてヤバくない?」
慌てて携帯を取り出した。マサコに電話しようと思ったのだ。プルルル……ガチャッ
「もしもし?」
「あっ、もしm……」
「うるさい!!」
「ゴメンナサイ……」
いきなり怒鳴られた。恐るべし、マサコ。
「あの、私今ニュースに出てたんだけど……」
「知ってるわよ」
「どうしたらいいかな?」
「別に気にしないんじゃない?」
「でも私なんかがテレビに出るって変だよ」
「そうかもしんないけど、それが普通なんでしょ?」
「うーん、そうなのかな?」
「まあいいわ。じゃあね」
「うん、バイバーイ」
通話を終えた。確かに言われてみればそうかもしれない。
自分から進んでテレビに出たわけでもないんだし。
それにしても……
「やっぱりちょっと恥ずかしかったなぁ」
私はしばらく悶々としていた。
それから数日後、50万円は株で全て溶かした。
「ううぅ……どうしてこうなった……」
