私はスウ。私は今、とっても困っている。
お金がないから何も買えない。
でもお腹は減るし、喉も渇く。
どうしよう……。
「あのう」
振り返ると、背の高い女の人が立っていた。
「はい?」
「もしよろしかったら……」
彼女はそう言って、小さな紙袋を差し出した。
中には焼き菓子が入っていた。
「えっ……いいんですか!?」
「いいですよ。私一人じゃ食べきれないので」
「ありがとうございます!」
その日以来、彼女とはよく会うようになった。
公園でよくおしゃべりをする。
彼女も一人暮らしをしているらしい。
「よかったらこれ、どうぞ」
ある日、彼女にクッキーをもらった。
「わあ!ありがとうございます!」
彼女の手作りだろうか?すごく美味しい。
「美味しいです!」
「本当ですか?」
「はい!」
「嬉しいなぁ。作った甲斐がありました」
それからというもの、私は毎日のようにお菓子をもらうようになった。
クッキーやケーキはもちろんのこと、飴玉やチョコレートなども貰った。
しかしある時を境に、彼女は姿を見せなくなった。
一体どうしてだろう。何かあったのかしら。
心配だけれど、私には確かめようがなかった。
そんなある日のことだった。
私がいつも通り、公園のベンチに座っていると、後ろから声がした。
「こんにちは」
振り向くと、そこには彼女がいた。
「あ!あなたは!」
「久しぶりですね」
「お元気でしたか?」
「ええ。大丈夫ですよ」
「よかったー」
「あの、最近見なかったけど、どうかなさったんですか?」
「実は入院してたんですよ」
「そうなんだ……」
「手術をして、それで少しの間入院していたんです」
「大変だったね……」
「でももう大丈夫よ」
「ところで今日は何持ってるの?」
「ああ、これでしょ」
彼女は手に持っていた紙袋を掲げた。
「何それ?」
「これはね、クッキーとかケーキとか、色々入ってるんだよ」
「へぇーすごいね!」
「一緒に食べる?」
「うん!」
二人でベンチに並んで座って食べた。
どれもとても美味しくて、つい手が止まらなかった。
気がつくと、空になった紙袋だけが残っていた。彼女はどこか寂しげな表情を浮かべていた。
そして口を開いた。
「ねぇ、知ってますか?人間にはね、三種類あるんです」
「三種類?」
「ええ。善人と悪人と、あとうんこする人」
「へぇ……」
「あなたはどれ?」
私は考えた。今までの人生を思い返してみた。
私はずっと良い子で生きてきたはずだ。きっと悪い人じゃないはず。
だけど私はふと思った。
「私は……うんこする人です」
「わぁー、正直な人ね」
彼女は笑っていた。私もつられて笑ってみせた。
それからも私たちは仲良く過ごした。
よく公園で会ったし、たまに街で見かけても、お互い挨拶をした。
彼女はお菓子をよくくれたし、私の方からもあげたりした。
ある日のことだった。
彼女が倒れた。病院へと運ばれた。
すぐに手術が始まった。
手術室の前のソファで待っている間、私は祈ることしかできなかった。
神様お願いします。彼女を救ってください。
しばらくして扉が開かれた。中から医者が出てきた。
「先生!」
「なんとか一命は取り留めました」
「本当ですか!?」
「ええ。ただしばらくは入院が必要です」
「良かった……本当によかった……」
「さあ病室に行きましょう」
「はい!」
それから一週間ほどして、彼女は退院した。
久しぶりに会う彼女は、以前より痩せていて弱々しく見えた。
「退院できて良かったね」
「ありがとうございます」
「これからどうするの?」
「そうですね……。とりあえず仕事を探してみようと思います」
「そうなんだ。見つかるといいね」
「頑張ります」
数日後のことだった。彼女は突然姿を消した。
私は公園に行ってみた。ベンチに座って待ってみた。
しかしいつまで経っても来ない。
次の日も、またその次の日も来てみたけれど、やっぱり彼女はいなかった。
私は心配になって、彼女の家に電話をかけてみた。しかし誰も出なかった。私は彼女の家を訪ねてみる事にした。
彼女の住んでいるアパートに着くと、私は部屋のインターホンを押した。
しかし返事はなかった。私はドアノブに手をかけた。鍵がかかっていない。私は恐る恐るドアを開けて部屋に入った。そこは真っ暗だった。私は電気をつけた。するとそこには、変わり果てた姿の彼女がいた。
彼女は包丁を手に持ち、自分の胸を刺していた。私は慌てて救急車を呼んだ。
彼女は病院に運ばれて手術を受けたけれど、間に合わなかった。
彼女は死んだ。私は泣いた。たくさん泣いて、そして誓った。
もう二度とこんな事は繰り返さないと。
私にはわかる。彼女は死にたかったわけじゃない。
ただ生きることがつらかっただけなんだ。だから自ら死を選んだんだ。
そうに違いない。だって私も同じ気持ちだもの。
私も彼女と同じ道を辿ろうと思う。
私は今、とあるビルの屋上にいる。
ここから飛び降りれば、楽になれるかなぁ。
フェンスの向こう側に立って下を見てみると、地面はとても遠く感じられた。
怖くなって足がすくんでしまったけれど、それでも勇気を出して一歩踏み出してみた。
その瞬間うんこがしたくなった。急いでトイレに向かった。
うんこを済ませた後、手を洗っていると、鏡に映った自分と目が合った。その顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。
もう死ぬのは止めよう。私は決心した。
私はうんこをする人だったから助かったのだ。
うんこは偉大だ。うんこ万歳!
人間は三種類に分けられる
作品