居酒屋に友達2人と行ってきたよ

私はスウ、大学の講義が終わり私は一人教室を出た。
「ねえ」と後ろから声をかけられた。振り向くと同じ講義を受けていたマサコだった。
マサコは私と同級生で、同じサークルに所属している。彼女はいつものようににっこりと微笑んだ。
「これから暇? ちょっとお茶でも飲まない?」
「いいよ」
と私は答えた。断る理由もなかったし、何より彼女と話をしてみたかったのだ。
私たちは近くの喫茶店に入った。店の中は空いていた。私たちのほかに客はいないようだった。
注文したコーヒーが運ばれてくると、マサコは言った。
「ねえ、最近調子どうなの?」
「別に普通だけど……」
と私は答えた。
「そうなんだ。実はさあ、今度コンパやるんだけど、来ない? 女の子たちみんな来るって言ってるけど、あなたもどうかなって思って」
「うーん……、悪いけどパスするわ」
と私は答えた。
「どうして? 何か予定でもあるの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……。なんとなくね」
「そう……。じゃあいいわ。また気が向いたら来てよ。絶対だよ」
と言ってマサコは笑った。
「ごめんね」
「じゃあね。バイバイ」
と彼女は言って歩き去った。
私は彼女が見えなくなるまでずっとその後ろ姿を見送った。
家に帰る途中、何度も転びそうになった。まるで足が地面についていないようだった。
ようやく家にたどり着いた時にはすっかり夜になっていた。私は部屋の明かりをつけ、ソファの上に寝ころんだ。
私はそのまましばらく天井を眺めていた。その時、電話が鳴った。
私は起き上がり受話器を取った。
「はい」
「もしもし、スウちゃん」
とマサコの声が聞こえてきた。
私は驚きで息が止まりそうになった。
「あのね、さっきの話だけど、中止になったの」
「えっ?」
「今度コンパやるって話よ」
「ああ……、そうなんだ」
「それでね、二人で食事でもどうかなと思って。どうかしら?」
「うーん……、どうしようかな」
「嫌なら別に無理には誘わないけど」
「ううん、行くよ」
と私は答えた。断る理由など何もなかった。
「よかった。じゃあ明日の夕方五時に駅前のレストランに来てくれる?」
「わかったわ」
と言って私は電話を切った。
次の日、私は約束の時間より十分ほど早く待ち合わせの場所に着いた。マサコはまだ来ていなかった。あたりを見回したがそれらしい人影はなかった。少し不安になったが、とりあえず待つことにした。
やがて約束の時間が過ぎた。それでもまだマサコの姿はない。さらに三分待ったがやはり現れない。何かあったのだろうか? 心配になって電話をかけようとした時、後ろから声をかけられた。
「あら、早いのね」
振り向くとそこにはマサコがいた。
「遅れてごめんなさい。ちょっと準備に手こずっちゃって」
「そう……、大丈夫よ」
私はほっとしてそう答えたが、マサコの服装を見て驚いた。彼女はジーンズにトレーナーという普通の格好をしていたのだ。
「ねえ、今日はどこに食べに行くの?」
と私は尋ねた。
「うーん……、実はもう決めてあるの。ここからすぐそこだからついてきて」
と言ってマサコは歩き出した。私は黙って後に従った。しばらくして私たちは一軒の小さな居酒屋に入った。中に入るとカウンターの奥の席に向かい合って座った。そこは厨房のすぐ近くだったので、調理をしている様子がよく見えた。
マサコはビールを注文した。私も同じものを頼んだ。すぐに運ばれて来たグラスを私たちはそれぞれ手に取った。
「乾杯!」と言うと彼女はぐっと一口飲んだ。私も同じようにした。
「ここのお店、おいしいのよ」
「へー、そうなんだ」
私は料理のメニューを手に取って眺めた。どれもおいしそうだったが、値段が高かったので食べるのをやめた。
マサコは楽しそうにおしゃべりを始めた。大学のこと、友達のこと、それから彼のことなどを話してくれた。
しかし私はあまり会話を楽しむことができなかった。マサコが何を言っているのかほとんど耳に入らなかった。ただ相槌を打つだけだった。
マサコは時々私の方を向いて微笑んだ。そのたびに私はどきりとした。心臓が高鳴り、胸が苦しくなった。そして、マサコの顔を見ることができず、視線をそらしてしまった。そんな私の様子に気づいているのかいないのか、彼女は終始笑顔を絶やさなかった。
しばらくするとマサコは話題を変えた。
「ねえ、スウちゃん、昨日の夜は何してた?」
「えっ?」
私は一瞬戸惑った。まさか本当のことを言うわけにもいかない。
「別に、何もしてないわ」
「嘘! きっと彼氏と会ってたんじゃない?」
「どうしてわかるの?」
「だって、今日のあなたはいつもと違うもの」
私は自分の頬が熱くなるのを感じた。恥ずかしくてうつむいたまま動けなくなった。
「やっぱりそうだったんだ」
とマサコは言った。
「ねえ、どんな風に違って見える?」
と私は聞いてみた。
「そうね……。なんていうか、女っぽい感じがするの」
「そっか……」
「ねえ、教えてくれる? 彼とどこに行って何してきたのか」
「いいよ」
と私は答えた。なぜか素直に言うことができた。
「まずね、二人で公園に行ったの。そこでベンチに座ってお話したり、手をつないだりしたわ。すごく長い時間だった。次に映画を見たの。それは恋愛もので、途中で眠たくなっちゃったんだけど、彼は最後まで見ようよって言って聞かなかったわ。それからね、喫茶店に入ってケーキを食べたり、また話をしたの。とってもロマンチックだったよ」
私が話し終えるとマサコは大きくうなずいた。
「スウちゃん、本当に幸せそう」
「うん、すっごく幸せよ」
「羨ましいなあ」
と彼女は小さな声でつぶやくように言った。
「マサコはそういう経験はないの?」
「もちろんあるよ。でもね、最近うまくいかなくなっちゃって」
「そうなんだ。何かあったの?」
「ううん、大したことじゃないの。でもね、彼が他の女の子と仲良くしているのを見ると悲しくなってきちゃうのよ」
「ふーん、そうなんだ」
私はうわの空で答えた。
「ねえ、もしよかったら、今度二人でどこか行かない?」
「二人で?」
「そうよ。ダメ?」
「別に構わないけど」
「よかったあ。じゃあ、決まりね」
マサコは嬉しそうに笑った。
私は彼女の顔をまともに見ることができなかった。この場から逃げ出したいと思った。しかし彼女はそれを許してくれなかった。
「それで、いつにする?」
「そうね……、来週の日曜日はどうかしら」
「わかった。予定を空けておくね」
と彼女は言った。
「今日は楽しかった。誘ってくれてありがとう」
と私は言った。
「こちらこそ。来週の日曜日楽しみにしてるよ」
と彼女は答えた。
「さてと、もう帰ろうかな」
「そう。気をつけて帰ってね」
と言って私は立ち上がった。マサコも立ち上がり、勘定を済ませた。私たちは並んで店を出た。
外はすっかり暗くなっていた。冷たい風が吹いていたが、火照った体にはちょうど良かった。
「それじゃあ、また明日」
と言ってマサコは駅の方に歩いていった。私もその背中に向かって小さく手を振り、反対方向に歩き出した。
マサコの姿はすぐに見えなくなった。
私はほっとしたような寂しいような複雑な気持ちになった。
アパートに着くと、私は部屋に入り鍵をかけた。コートを脱ぎベッドの上に寝転がったが、なかなか眠れなかった。
しばらくして、私は起き上がり台所に立った。冷蔵庫の中からビールを取り出して飲んだ。喉が渇いて仕方がなかったのだ。
耳を澄ますと電話が鳴っているのに気づいた。受話器を取ると、マサコの声が聞こえてきた。
「もしもし、私だけど」
「どうしたの?」
「あのね、今日は楽しかったよ。本当にありがとね」
「私も楽しかったわ。こっちこそ誘ってくれてありがとう」
「また一緒に遊ぼうね」
「うん、いいよ」
「約束だよ」
「わかった」
「じゃあ、またね」
「バイバイ」
私は受話器を置いた。そして二本目を開け、一気に飲み干した。

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