うんこなんて大嫌いだー
私は女子大学生のスウだ。今年で19歳になる。
そして、うんこが大好きだ。
私はうんこの匂いを嗅ぐのも好きだが、うんこの話が大好きなのだ。
だから私はうんこが好きだと自覚した時、将来は絶対にうんこに関わる仕事に就くと心に決めたのだ。
「ふむ……」
しかし、世の中そんなに甘くない。
私が就きたいと思っている職業にはうんこなんて欠片も関係がないのだ。
そもそも、なんで私みたいな若い女の子がうんこなんかに興味があるのか?って話だが、これはもうしょうがないことなのである。
だって私、うんこしないと死んじゃう病気なんだもん……!
「はぁ〜……」
ため息しか出ないよ。
どうしたらいいんだろ……。「あっ」
そうだっ! いっそのこと自分で作っちゃえばいいんじゃないか!? うんこ好きなら、うんこの専門家になればいいんだよ!!
「天才か?」
そうと決まれば話は早い。
さっそくうんこに関する資格を調べよう!
「えーっと、うんこアドバイザー……ダメだ」
うんこソムリエとか、うんこ鑑定士とか色々あるけど、どれもこれもピンと来ない。
やっぱりうんこに直接関わる仕事をしたいよね。
でも、どんな仕事ならいいんだろう?
そうやって調べているうちに、とあるページに行き着いた。
【うんこ好きによる、うんこ好きのための、うんこセミナー】
「これだ!」
ここに行けば私のやりたいことが見つかるかもしれない!
「よしっ!明日行ってみよう!!」
翌日、私は昨日見つけたセミナーに参加することにした。
会場に着くと、そこにはすでに大勢の人が集まっていて、皆うんこについて熱く語っていた。
「みんな凄いなあ……」
こんなにも多くの人が真剣にうんこのことを考えていると思うと、自分も負けてられないという気持ちになる。
そして、ついにうんこセミナーが始まった。
最初は講師の話を聞きながらメモを取っていたのだが、段々と周りの人の熱気に圧倒されてしまって、途中からはただぼーっと眺めていただけだった。
しかし、セミナーが終わった後、私は興奮を抑えきれずにいた。
「す、すごい……!」
というのも、今日のセミナーではうんこについての様々な知識を学ぶことができたのだが、中でも特に興味深かったのがうんこの成分だったのだ。
うんこの中には大きく分けて3つの種類があり、それぞれに違った特徴があるらしい。
1つ目が水分が少なく固い便のこと。
2つ目は水分を多く含んだ柔らかめの便のこと。
3つ目は水分をほとんど含まない下痢のような便のことである。
これらのうんこの違いを知ることで、健康的な生活を送ることができるようになるのだという。
また、それぞれのうんこの特徴に合わせた食べ方や生活習慣を教えてもらえたので、これからの生活に役立つこと間違いなしである。
さらに、うんこの栄養学についても学ぶことができ、より深くウンコのことを理解することができた。
正直、今日だけで一生分のうんこを学んだ気がするくらいだったが、まだまだ学び足りないとも感じた。
次の日、うんこセミナーで学んだことを復習していた。
「ん?これは……」
机の上に1枚のチラシを見つけた。
「『あなたの夢叶えます』か……」
どうやら夢を叶えるためのお手伝いをするサービスを行なっているようだ。
気になったので詳しく見てみると、そこにはこう書かれていた。『あなたが本当にやりたいことは何ですか?』
「へぇ〜……」
なかなか面白いキャッチコピーだと思う。
自分の本当のやりたいことを見つけるために、人生相談に乗ってくれるということだろうか? こういうのって結構面白そうだなぁ……。
よしっ!私もやってみようかな!
「すみません。このサービスを受けてみたいんですけど……」
数日後、私は早速例の夢叶えサービスを利用することにした。
そして今、目の前にはスーツを着た女性が座っている。
「本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
お互いに挨拶を交わした後、女性は話を始めた。
「まず初めに確認させていただきたいのですが、あなたは自分の夢というものを考えたことがありますか?」
「はい。あります」
「それはどのようなものでしょうか?」
「私の夢は、自分の好きな仕事に就いて、たくさんの人にうんこを知ってもらうことです」
「なるほど。素晴らしいですね」
「ありがとうございます」
「ちなみに、なぜうんこに興味を持ったんですか?」
「小さい頃、お母さんに絵本を読んでもらったことがあるんです。その時、主人公の女の子がうんこに触るシーンがあって、それがすごく印象的だったので、それ以来ずっと憧れていました」
「ふむ……つまりあなたにとってうんこは憧れの存在だということなんですね?」
「はい」
「わかりました」
そう言うと、彼女は手元にあるノートのようなものを開き、何かを書き始めた。
「では次に、どうしてその夢を諦めようとしているのか教えてくれますか?」
「諦めようとしてるわけじゃないです。ただ、今の自分じゃ無理だと思っています」
「どうして?」
「だって、私まだ大学生だし、勉強とかも全然だから……」
「うーん……そういう問題ではないんですよね」
「どういうことですか?」
「例えば、高校生の頃、部活とかバイトとかしてませんでしたか?他にも、スポーツとかゲームとか、趣味に没頭していた時期があるはずですよ」
「そういえば、友達とカラオケに行ったり、映画を見たり、漫画を読んだりしたこともあります」
「それと同じですよ。学生のうちにやっておくべき経験というのは、何も部活動だけではありません。それに、どんなに頑張っても手に入らないものはたくさんあるでしょう?でも、逆にどんなものでも努力次第で手に入れることができるものもあります。その違いは何だと思いますか?」
「えっと……才能とか、運、ですか?」
「それも確かに必要かもしれません。しかし、最も大切なのは”覚悟”だと私は考えています。自分がやりたいと思ったことに全力で取り組むための覚悟です。もちろん、途中で嫌になったり、面倒臭くなったりする時もあるとは思いますが、それでも最後までやり通す覚悟を持つことができれば、必ず成功するはずです」
「覚悟……ですか……」
「そう。だからこそ私は、自分の可能性を信じて、行動を起こすことが大切だと考えているのです」
彼女の言葉を聞いて、私はハッとした。
「私は今まで、うんこに対する情熱はあるけど、それを上手く表現することができなかったんです。でも、今日こうしてお話をすることで、自分の気持ちを整理することができました。ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
その後、私は彼女と別れ、帰路についた。
「そっか……うんこって凄いなぁ……」
うんこの魅力に取り憑かれたあの日から、私の人生は大きく変わったと思う。
うんこのおかげで、たくさんの人と知り合えたし、たくさんの知識を得ることができた。
うんこの素晴らしさをもっと多くの人に伝えたくて、私はうんこの専門家になることを決意した。
うんこのことなら誰にも負けない自信があったから、きっとうまくいくだろうと思っていた。
しかし、現実は甘くなかった。
うんこの魅力を伝えようと意気込んでみたはいいものの、いざ講義を始めようとすると、何を話せば良いのかわからなくなってしまったのだ。
これまで学んできたことを全て吐き出すつもりで話しても、誰一人うんこのことを理解してくれなかった。
それどころか、みんなうんこに興味がないらしく、うんこについて話すたびに、どんどん不機嫌になっていった。
うんこについて熱く語れば語る程、周りの人からは白い目で見られるようになっていった。
「もうやめよう……」
うんこについての知識を得たところで、結局はうんこなんて何の役にも立たないんだと思い知らされただけだった。それからしばらくして、私はうんこに関わることを辞めた。
うんこについての興味を失い、うんこという言葉を聞くだけで吐き気がするようになった。
うんこのことを思い出すだけで、気分が悪くなり、涙が溢れてくるようになった。
「うんこ……嫌い……」
私は心の底からそう思った。しかし、そんな生活を送っているうちに、少しずつ体調に変化が現れてきた。
まず、以前よりも体重が増えた。
さらに、便秘がちになり、肌荒れも酷くなった。
さらにさらに、慢性的な頭痛に悩まされるようになった。
「なんでこんなことになっちゃったのかな……」
原因はわかっていた。
うんこから逃げているからだ。
本当は気づいていた。
自分がどれだけうんこを愛していたのかということを。
うんこの魅力を伝えるために、うんこに関する知識を深めていった日々は決して無駄ではなかったということに。
ただ、認めたくなかった。認めてしまったら、自分の人生を否定することになると思った。
だから、うんこから目を逸らし続けた。
うんこに関する全ての情報を拒絶し続けた。
その結果、私はうんこアレルギーになってしまった。
うんこという単語を聞いただけでも拒絶反応を起こしてしまう。
うんこを目にした瞬間、嘔吐してしまう。
うんこという文字を見ただけで気絶する。うんこを食べようものなら、全身に発疹ができ、呼吸困難に陥る。
うんこに対してトラウマを植え付けられた私は、うんこに怯えながら生きていくことになった。
うんこは怖い。うんこは恐ろしい。うんこは悪魔の産物だ。
うんこは汚い。うんこは臭い。うんこは不潔だ。
うんこは有害だ。
うんこなんてなくなってしまえばいい。うんこがなければ、うんこに苦しめられることもなかったはずだ。
うんこのせいで私は人生をめちゃくちゃにされた。
うんこなんて大っ嫌いだ。
「よし!うんこ克服大作戦決行!」
私は決心を固めた。
うんこを克服しなければ、私は前に進めない。
だから私はうんこに立ち向かう。
私はこれからうんこを克服するために様々な取り組みを行っていく予定だが、その第一歩として、まずは自分の気持ちを整理したいと思う。
正直、私は今でもうんこが怖くて仕方ない。
うんこを見ると、泣き出したくなるくらい辛い。
でも、私は決めたんだ。
うんこに対する恐怖を乗り越えてみせると。
うんこなんか恐るるに足らないと証明してやる。
私はうんこが大好きなんだ。うんこが好きだからこそ、うんこを恐れている自分を認めたくない。
うんこを好きになることができれば、きっと私は変われる。
うんこに対する想いを全て吐き出すことができたら、私はうんこ恐怖症を克服できるはずなのだ。
そのためには、自分の気持ちを整理する必要がある。
「うんこに対する気持ちを文章にしてみよう」
自分の気持ちを整理するためには、紙に気持ちを書き出すのが一番だと思った。
そこで、私は日記帳を開くことにした。
日記を書く習慣はなかったけど、毎日うんこについて考える時間だけはたくさんあったため、うんこへの想いが綴られている。
私はうんこ日記を読み返してみた。
うんこに対する自分の気持ちを客観的に見つめ直すことができるかもしれない。
うんこの魅力を伝えようとした時、私はどんな風に語りかけていただろうか。
うんこの魅力は一体どこにあるのだろう。
うんこの魅力とは、うんこの素晴らしさは、何なのだろう。
私はうんこの魅力について考えてみた。
うんこの魅力は、うんこの素晴らしさは、うんこの愛らしさは、私のうんこの愛しさは、うんこの優しさは、うんこの可愛さは、うんこの強さは、うんこの温かさは、うんこの大きさは、うんこの柔らかさは、うんこの香りは、うんこの味は、うんこの触感は、うんこの歯ごたえは、うんこの弾力性は、うんこはうんこはうんこは……
「あぁー!!ダメだ!!」
うんこの魅力について考えれば考える程、頭がおかしくなりそうになったので、途中でやめた。
やはり、うんこについて深く考えたところで、何も得るものはないらしい。
うんこが好きだ。うんこが嫌いだ。うんこが憎い。うんこが許せない。うんこが嫌いだ。うんこが欲しい。うんこが食べたい。うんこがしたい。うんこが愛しい。うんこが恋しい。うんこに溺れてしまいそうだ。うんこが大好き。うんこを愛してる。うんこが欲しくてたまらない。うんこは素晴らしい。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。うんこ最高。
「あー!!!もう!うんこ!うんこ!うんち!おなら!屁!げっぷ!鼻くそ!痰!胃液!小便!うんこ!うんこ!うんこぉおお!!!」
私は自分の頭を掻きむしった後、日記帳を地面に叩きつけた。
こんなことしたって、自分の気持ちが落ち着くわけがない。
でも、それでも、何かせずにはいられなかった。
うんこが大好きな気持ちと、うんこが嫌いだという気持ちが入り乱れて、頭の中がぐちゃぐちゃになっている。
私はそんな不安定な状態で、次のページを捲った。
そこには、うんこに対してどう思っているかではなく、自分がどのように感じているのかを、できるだけ簡潔に書くようにと書かれている。そのアドバイスに従い、私はペンを走らせる。
自分が今抱いている感情を文字として書き起こすことで、少しは落ち着けるかもしれない。
そう思ったからだ。
私はノートにこう書いた。
『うんこは神』
「…………」
自分で書いておいてなんだけど、意味不明だった。
んこに神様もクソもない。
そもそもうんこはうんこだ。
うんこはうんこであって、うんこ以上の存在ではない。
うんこが神?うんこがうんこ以上の存在?
ふざけんじゃねぇよ!うんこはうんこだろ!
私は自分自身に腹を立てながら、続きを書いた。
『私はうんこが大好きです。私はうんこが大好きで好きで仕方ありません。私はうんこが大好きで大好きで仕方ないのです。私はうんこが大好きなのです。私はうんこが大好きなのです。私はうんこが大好きなんです。私はうんこが大好きなんです。私はうんこが大好きなんですよ。私はうんこが大好きなんです。私はうんこが大好きなんだよ!』
私はうんこの魅力について語ろうとした。
しかし、どれだけ言葉を並べてみても、うんこの魅力を伝えることができない。
うんこが大好きだということしか伝えられない。
私はうんこが好きすぎて、うんこ以外の言葉が思い浮かばないのだ。
でもこれでいいじゃないか。私はうんこが大好きなんだから。
うんこの魅力を文章にして伝えようなんて無理な話なんだ。
私はうんこのことが好き。
だから、私はうんこを愛するんだ。
私はうんこの魅力を語るのではなく、うんこのことを語るんだ。
「よし!」
私は勢いよく立ち上がった。
「決めたぞ」
私は決めた。これから先、一生うんこについてだけ考えて生きていく。
それが私にとっての幸せな生き方であり、生きる道なのだ。
