よくわからないまま30万円失いました
私はデイトレーダーのスウだ。
「くそっ! やっちまった……」
私は昨日、株の信用取引で大損したのだ。
しかも、かなり大きな金額を。
「どうする?どうしよう?」
焦る私に、
『ピンポーン』
インターホンが鳴った。
誰だろう? モニターを見ると、そこには一人の男が映っていた。
年齢は40代前半ぐらいだろうか? スーツ姿だが、少し着崩している感じがある。
ネクタイも緩めていて、シャツは第一ボタンまで開いている。
髪は短めの七三分け。
顔はイケメンとは言えないが、ブサイクでもない。
背は180cmくらいあるんじゃないかな? 体つきはかなりガッシリしていて、格闘技でもやっていそうな印象を受ける。
そんな男だった。
こんな奴には見覚えがないのだが……
私は警戒しながら応答ボタンを押して、声をかける。
「どちら様ですか?」
すると男は名乗らずにこう言った。
「お困りみたいですね」
私はイラっとしたが、取り敢えず要件を聞いてみることにする。
「そうだけど……。あんた誰だよ? 私のこと知ってんのか?」
しかし、その問いに対する答えはなく、代わりに質問が返ってきた。
「今、いくら持ってますか?」
何なんだこの野郎! 喧嘩売ってんのか!? と思ったけど、一応答える。
「……1万ちょっとかな」
「じゃあ、今日中に50万円稼いで下さい」
「はぁ!? ふざけんじゃねぇよ!」
いきなり何を言ってんだこいつは! 無茶苦茶過ぎるわ! と、思ったら男は続けて言う。
「あなたが持っているお金の価値を教えてあげましょう。それはね、あなたの命よりも重いんですよ」
「どういう意味だ?」
「つまり、あなたの命より、1万円の命の方が価値が高いということです」…………
なるほどな。
そういうことか。
私が理解したことを悟ったのか、男は話を続ける。
「さっきも言いましたが、今日の夜までに50万円を用意して下さい。出来なければ死にます。それが嫌なら、死ぬ気で頑張ってください」
そして男は去っていった。
「クソッ! なんなんだあいつは!?」
私は腹立たしさをぶつけるように、パソコンに向かって叫んだ。………………
「取り敢えず冷静になれ!」
まずはこの状況を整理する必要がある。
・今朝、謎の男が家に訪ねてきた。
・「お前の金より俺の命の方が価値が高いんだよ」と言われた。……これって脅迫じゃない? ヤバくない? 警察に相談した方がいいよね? でも、証拠もないのに動いてくれるわけないか。
それに、もしあの男の言っていることが本当だとしたら……
私は怖くなった。
「どうすればいいんだ……」
このままでは確実に殺される。
でも、一体どうやって金を用意すれば良いんだろう?
「……そうだ! ネット銀行に預けている現金を使えば……」
私はすぐに自分の口座を確認した。
……良かった。30万円はまだ無事だ。
でも、これはあくまで一時的な対処に過ぎない。……やはり何か策を考えないとダメだ。
そこで私はふと思い出した。
「これをFXで増やすか」
以前、知り合いから教えてもらった方法だ。
……確か、株価とか為替の動きを利用して利益を出す投資法だったはず。
詳しいことは忘れてしまったけど。
「よしっ! やってみるか!」
私は早速、取引を始めた。
「頼むぞ。私の30万円よ!」
『ピコーン!』
画面に「買い注文が成立しました」という表示が出た。
よしっ!これでとりあえず一安心だ。
後は結果を待つだけだ。
「待てよ……。そもそも、いくら買ったんだっけ?」
私は慌てて確認する。……えぇっと、10万ドル分、日本円で1000万円分だな。
ところが次の瞬間、
「おい! 大変だ!ロスカットされちまった!」
つまり、30万円の損失である。
「嘘だろ……。もう終わりなのか?」
私は絶望しかけたが、なんとか踏み止まった。
まだ諦めるのは早い。
確かに失ったものは大きい。
そして夜になってもあの男は来なかった。
「やっぱりいたずらだったのか?」
結局、私は30万円を失っただけだった。
「ちくしょう! やっちまった……」
私は悔しくて涙が出てきた。
「でも、本当にどうしよう? 生活費がない……」
私は焦っていた。
なぜなら、今は家賃すら払えない状況だからだ。
でも、いつまでもこうしている訳にはいかない。
仕方ないので、私は最後の手段に出ることにした。
「キャッシングするか」
私は近くのコンビニまで行き、ATMでお金を借りることにした。
なんとか20万円を借りられた。
これで当面の生活資金は確保できた。
しかし、それでも不安は残る。
この先ずっとこの生活が続くのかと思うと憂鬱になる。
「くそっ! 絶対に30万円を取り返してやる!」
私は決意を新たにした。
それから3ヶ月後。
私は必死に働いた。
仕事が終わると家に戻り、毎日株の勉強をした。
「今度こそ負けない!」
そして再び、デイトレードを始めようとしている。
