寝てるだけでに3億円手に入れました
私はFXトレーダーのスウだ。
今日は一日中、パソコンにかじりついて相場を監視していたが、やはり今日もダメだったようだ。
昨日、一昨日と利益が出ていたから、少し調子に乗ってしまったかもしれない。しかし、今日の結果がダメでも明日があるさ。明日で駄目なら明後日もあるさ。私は気楽な気持ちでそう考えることにした。
今月は50万円の利益がある。これは私が毎日コツコツ稼いだお金である。私にとっては大金だが、一般的なサラリーマンの生涯年収に比べると微々たるものだ。
私の家は貧乏ではないが裕福でもない。だからこの程度の稼ぎでは家族を養っていくことができない。だが私は専業トレーダーとして生活しているのだ。
もちろん、こんな生活は長く続かないだろうし、そもそも長く続けようと思っていない。いずれはこの世界から足を洗って普通の生活を送れるようになりたいと思っているがどこの企業も雇ってくれない。
そのため、もっと稼げるようになる必要があるのだ。
しかし、焦っても仕方がない。地道に努力するしかないだろう。
私はそんなことを考えながら眠りについた。
翌日、私はいつものようにパソコンを立ち上げた。そしてチャートを確認してみた。すると……なんということだろうか! 私の口座残高が増えているではないか! どういうことだ? 意味がわからんぞ……。
私は慌てて取引履歴を確認した。誰かが売買をしていたようだ。そして私の口座には3億円ほど入っている。なんだこれは!? なぜ私の口座で売買されているのだ? 誰かが売買したのか? わからないことだらけだったが、とにかく残高が増えていたことだけは事実だ。
私はすぐに銀行に出金をしてネットで自分の口座を調べた。その結果、やはり3億円もの現金が私の口座に入っている。
いったいどうしてこんなことに……? わけがわからなかったが、とりあえず冷静になって考えることにした。まず考えられることは、私が寝ている間に寝ぼけて取引をしたという可能性だ。これは十分にありえることだ。私は寝ている間に才能を発揮するタイプなのか。きっとそうだ。
それにしても3億というのは多すぎる気がするが、倍々で増やせばすぐ到達する金額だ。
これは私のお金に違いない。私のものなのだ。誰にも渡さないぞ。
私はニヤリと笑みを浮かべると、そのまま家を出てコンビニへと向かった。
コンビニに到着するとATMに向かった。そして残高照会ボタンを押して、現在の残高を確認したがやっぱり3億円のままだ。
夢ではないらしい。
次に私はFX会社に電話をして事情を説明した。
「実は、よく覚えていないのですが、昨日、自分が眠っているうちに勝手に取引をしたようなんです」
「なるほど。それは大変ですね。ちょっと確認してみますね……」
しばらくして受付嬢の声が聞こえてきた。
「お待たせしました。お客様のおっしゃる通り、確かにお客様の口座で取引が行われています。ですが、問題はありませんよ。なぜなら、そのお金は間違いなくあなたのものです」
「どういうことでしょう? 理解できないのですが……」
「はい。つまり、あなたが眠っている間に勝手に取引されたということですよね?」
「えぇ、まぁ、そうなりますかね」
「例え眠っていても取引をしたのはお客様です。ですからこれはお客様のお金となります」
「あー、そういうことだったんですね!」
私は納得した。
「はい。それでは失礼します」
電話を切ると再び家に帰って銀行に出金したお金をもう一度FX口座に入金した。
3億あれば働かなくて済むが更に増やしたくなるのがFXトレーダーの宿命だ。
そしてパソコンの前に座り相場を監視し始めたのだが、特に問題はなかった。
今日は大丈夫だな……。
しばらく監視していると、突然、画面が激しく動き出した。と同時に眠気が襲ってきた。
そして次の瞬間、口座残高がマイナス100万になっていた。
私はパソコンの前で寝てしまってその間にトレードをしていたのだ。
くそっ! なんということだ!! 私は絶望的な気持ちになった。せっかく増やしたお金なのに……。もう二度と取り戻せないじゃないか! 泣きそうになりながらも必死で頭を働かせた。なんとかしなければ……。このままでは大変なことになる。
どうにかしないと……。
だが、どうにもならない。
私は諦めて全てを放り出すことにした。
私はパソコンの電源を落としてベッドに入った。そして目を閉じた。
翌朝、目が覚めるとパソコンを立ち上げて口座残高を確認した。やはり口座残高はマイナス100万である。
当然である。3億まで増やしたというのに一瞬にして消えてしまったのだ。更に100万を支払わなければいけない。
しかし、不思議と後悔はない。むしろ清々しい気分である。
私は大きく息を吸い込むとゆっくりと吐き出した。
そして……
「ざまあみろ!!」
私はそう叫ぶと大声で笑い続けたのだった。
私は働きたくない。100万円はお母さんに払ってもらおう。
お母さんごめんなさい。
