幻のうんこアート
私はスウ。ここにあるのは誰かが流し忘れたうんこだ。
茶色くて、丸っこくて、可愛らしいフォルムをしている。
私はそのうんこの写真を撮った。
ただどれだけ可愛くてもSNSにアップすることは出来ない。
こんなものを公開すると私のアカウントが凍結されてしまう。
SNSには載せられないけど、写真に収めて保存しているのだ。
「あー、可愛い……」
うんこを眺めながら私は呟いた。
誰にも理解されなくてもいい。これは私だけの秘密なのだから。
「ちょっとアンタ」
「えっ?」
振り向くとそこには同級生の女がいた。
「なにしてんの? 気持ち悪いんだけど」
彼女はそう言って去って行った。
どうやら私がうんこを見つめていたところを見られたようだ。
私は彼女に何も言い返せなかった。
だって私はうんこが大好きなんだもの。
とりあえずうんこを流しその場を離れた。でも彼女の言葉は頭から離れない。
「うぅ……もう嫌だよぉ……」
私は涙を浮かべるしかなかった。
翌日、いつものように講義を受けるため教室に向かった。
だけどそこに彼女の姿はなかった。
休んでいるのかと思ったけど次の日もそのまた次の日も来ることはなかった。一体どうしてだろうと思っているうちに一か月が経った。
流石に連絡の一つくらいあってもいいと思うけど彼女からは音沙汰がない。
気になって連絡してみたけど返事はない。
やっぱり何かあったんじゃないだろうか。
心配になった私は彼女の家に向かうことにした。
「……あれ?」
彼女が住んでいるアパートの前に来た時だった。
郵便受けの中にチラシのようなものが入っていることに気づいた。
何気なくそれを取り出してみるとそれはチラシではなかった。
「……え!?」
それはなんと一枚の写真だった。
写っているのは紛れもなくあの時のうんこである。しかもただのうんこじゃない。
まるで芸術作品のような美しい形をしていたのだ。
さらに驚いたことにその写真の下にはこう書かれていた。
『うんこアート』
あのうんこは彼女がしたものだったのか!それにしても凄い技術だ。
本当に生きているみたいに見えるし、本物と見間違うレベルだ。
こんなことが出来るなんて信じられなかった。
そしてそんなことができる人間がいるとは思わなかった。
私は彼女にもう一度会いたいと思った。
会って話をしたい。
「あぁ……会いたいよぉ……」
思わず本音が漏れてしまうほど私は興奮していた。
それから数日後、私は再び彼女の家にやって来た。
相変わらずインターホンを押しても反応はない。
それでも私は諦めずに何度もチャイムを鳴らし続けた。
「はい……どちら様ですか?」
ようやくドアが開き中から出てきたのは彼女ではなく知らない男性だった。
年齢は三十代後半くらいだろうか。少し痩せていて眼鏡を掛けている。
私は彼に用件を伝えた。すると彼は困った表情をした。
「すいません、ここにそんな人いないですよ……」
「えっ!?」
予想外の返答に私は困惑するばかりだった。
じゃああの写真は何だったんだろう? 結局謎を抱えたまま帰宅することになってしまった。
「もしかして……幽霊だったりして……」
自分で言っておいて怖くなった。
でも不思議と恐怖心は無かった。むしろわくわくしていた。
あんなに綺麗なうんこが出来る人がどんな人物なのか知りたくなっていたからだ。
