ズボンのポケットから出したもの
私はスウ。スーパーでレジ打ちのバイトをしている。
最近よく来る男がいるんだけど、それがちょっと困った客なのよ。その男って言うのがね……
「いらっしゃいま……」
「やあ! 今日も会いに来たよ!」
「……」
そう言って爽やかな笑顔を見せる彼こそ、私が迷惑している男だ。名前は知らないけど、年齢は多分私と同じだと思う。いつも同じ時間に店に来ては、私のレジに並ぶ。そして毎回のように「君に会いに来ました」なんて言ってくるのだ。正直気持ち悪いし、怖いから止めて欲しい。
「えっと、お会計が一点五八円になります」
「じゃあこれとこれをお願いするよ」
「はい、合計で六四〇円です」
彼は財布を取り出し、そして戻した。
(何やってんだろう)
そんな事を思っていると、彼はズボンのポケットに手を入れる。そこから手を出すと、そこには大量の一円玉があった。
(うわぁ……)
思わず顔を引きつらせてしまう。彼はそれを全て私に差し出した。
「これで頼むよ」
「あ、あの、申し訳ありませんが、この金額だとお釣りをお渡しする事ができません……」
「全て一円玉だからお釣りはないだろ」
確かにそうだ。でも普通に考えておかしいだろう。一円玉で大量に払ってどうするつもりなんだ?
「あー、すみませんお客様、当店の規則により、そのような行為はご遠慮いただいておりまして……」
すると彼の表情が変わる。不機嫌そうな顔をして舌打ちをした。
「チッ、使えない店員だな」
「す、すいません……」
「もういいよ。それならそれで」
そう言って千円札を取り出し支払いをして、彼はそのまま店を出ていく。私はホッとしたようにため息をつくと、次のお客さんが来たので対応を始めた。しかし彼が気になって仕方がない。あの大量の一円玉を一体どうするつもりなんだろうか。まさか全部使うつもりなのか? いやいやありえないだろう。結局その後は何も起こらず仕事を終えた。
