うんこ好きの彼氏がほしいなぁ

私はスウだ。うんこが好きだ。でも、うんこの話をするとみんなに嫌な顔をされるがそれでも気にせずうんこの話をする。なぜならば、うんこは素晴らしいものだからだ。
まず第一にうんこには色がある。うんこ色というだけで色が伝わる。そして何より匂いが良い。うんこを嗅いだだけでその人のことが全てわかるといっても過言ではないほどに良い匂いなのだ。うんこというのは、人間の感情の発露であり、人間という動物の本質そのものなのだ。だから、うんこは素晴らしい。うんこは芸術品であり、至高の存在である。うんこは尊いのだ。
第二にうんこは食べることができる。うんこを食べても腹を壊したりしない。うんこは栄養満点だし、味も美味しい。特に便秘で悩んでいる人にとってうんこは最高の食べ物である。
第三にうんこは素晴らしい。うんここそ究極にして至高の存在である。うんこは神にも匹敵するほどの偉大さを持ち、全ての生物の頂点に立つ存在なのだ。第四にうんこは――
「……また始まったよ」
「あーはいはい。もう聞き飽きたわ」
「スウちゃん、今日も元気ね〜」
私の周りにいる友達たちがウンザリした顔で私の話を聞いてくれる。いつものことなので、皆慣れっこなのだ。
「ところで、スウちゃん。今日の放課後空いてる?」
「もちろんだよ! 何か用事でもあるの? デート!?」
「うふふ〜。実はねぇ……」
彼女は照れたように頬に手を当てて、体をくねらせた。可愛い。抱きしめたい衝動を抑えるのが大変だった。
「合コンに行くんだけどぉ……人数合わせでいいから来て欲しいんだぁ〜」
「行く!」
即答であった。
合コンとは合同コンパの略で、複数の男女が集まって恋愛関係に発展したりならなかったりするアレのことである。つまり、合コンとは恋人を探すための場なのだ。そんな場所に私が行かないわけがないではないか。
「じゃあ決まりだねっ! 詳しいことは後で連絡するね〜」そう言って、彼女達は教室から出て行った。
私は席に座って、鞄の中から教科書を取り出した。授業が始まるまで時間があるので、読みかけの小説を読むことにした。
「……」
しかし、集中できなかった。理由は単純明快。先ほどの彼女の言葉を思い出していたからだ。
(デートかぁ……。どんな服着ていけばいいかな?)
私は今まで一度も男性と付き合ったことがない。そもそも男性が苦手なのだ。だが、好きな人が出来たら付き合いたいとは思っている。そのためにも今のうちから男性との接し方を学んでおきたかった。そこで考えたのが合コンだったのだが……。(ああ、緊張してきた)
まだ始まってすらいないのにドキドキしてきてしまった。落ち着くために深呼吸をした。その時、後ろから声をかけられた。
「あれぇ? スウじゃん」
振り向くとそこには、同じクラスの男子生徒がいた。名前は覚えていない。正直興味がなかった。
「何読んでんの?」
「うんこの本だけど……」
「お前うんこ好きだよなー」
「うん、大好きだよ」
彼は私が読んでいた本を見て言ったようだ。うんこ好きということを隠すつもりはない。だって、うんこは最高なんだもの。隠す必要なんてない。堂々と言うべきだ。
「俺もうんこって嫌いじゃないぜ」
「そうなの?」
「おうよ。むしろ好きだぞ」
意外な答えだった。うんこが好きだという人は何人もいたが、彼みたいに面と向かって好きだと言った人はいなかった。私は彼に好感を持った。
「ちなみに、なんでうんこが好きなの?」
「そりゃあ臭いけどさ、臭ければ臭いほど良い匂いになるんだよ」
「なるほど、そういうことね」
うんこの匂いを嗅ぐと頭がクラっとすることがある。きっとそれは脳に刺激を与えるからだろう。その刺激こそが人間の本能を刺激しているのだ。
人間は自然の中で生きている動物である。自然の中には様々な匂いが存在する。例えば森林の匂いとか土の匂いなど様々である。その中で最も強い匂いを発するものが『糞』なのだ。
その強烈な匂いを嗅いだ時、人は理性を失うのだ。その結果として、うんこの匂いを嗅ぎたいという欲求が生まれるのだ。そして、その欲望に抗うことは容易ではない。
何故ならその匂いは麻薬のように人を惹きつけるからだ。
その証拠に多くの芸術家たちはうんこをモチーフにした作品を残している。
「それじゃあまたな」
「うん。また明日」
彼のうんこに対する思いを聞いて、少しだけうんこのことを見直した気がする。そして、同時に自分ももっと頑張ろうと思った。
放課後は合コンだ。私は友達と一緒に電車に乗って会場に向かっていた。
「ねえ、スウちゃん」
「どうしたの?」
「今日のお相手はどんな人たちだと思う〜?」
「うーん。イケメンだと嬉しいんだけど」
私は女の子らしい願望を言った。やっぱり見た目は重要なのだ。
「そうだよねー。やっぱりカッコイイ方がいいもんね」
「うんうん」
「でもぉ、スウちゃんはぁ、別にぃ、顔が良くなくてもいいんでしょ〜」
「まあ、そうだけど」
「じゃあさ、うんこ好きな人と付き合ったら〜」
彼女はニヤッとした表情でとんでもないことを言う。
「結婚できるかもよ〜」
「……えっ!?」
「スウちゃんはぁ、顔よりうんこの方が大事なんだから〜」
顔よりうんこの方が良いというのは、私にとって当たり前のことだった。だから、私はそのことを特に気にしていなかったが、改めて他人から指摘されると恥ずかしい気持ちになった。
「そ、そんなことはないよ! けどうんこは大事だね!」
慌てて否定したが、声が大きくなってしまった。周りの乗客の視線を感じて、ますます焦った。友達の方を見ると笑っていた。
「もう! 酷いよ!」
「ごめんなさ〜い」
彼女は謝ったが、全く反省しているように見えなかった。
「さぁ、今日の合コンは頑張ろう!」
気を取り直して合コンに臨むことにした。

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