私は本屋でバイトをしているスウだ。
今日は店長が急に休むことになったので、代わりに私がレジに立った。
「いらっしゃいませ」
客が来るとそう言うのが決まりだ。
でもこの客、様子がおかしい。
「あの……この本下さい」
その客が指差したのは『ウンコ』というタイトルの本だった。
「はい、ウンコですね?」
「違うよ! ウンチだよ!」
客は顔を真っ赤にして怒っている。
「えっ? ああ、はい、すいません。ウンコですね」
「だからウンチだって言ってるじゃないか!」
どうやら客はこの本をウンチと言いたいらしい。
でも表紙には『ウンコ』って書いてあるし……。
「すいません、お客様。こちらのタイトルに間違いがあるようです。お手数ですが交換させていただきます」
「嫌だね! 僕はこれが欲しいんだ! 買うから売ってくれ!」
客はかなり興奮しているようだ。
「申し訳ありません。そういうわけにもいかないんです」
「どうしてだい!? 君は僕の気持ちがわかんないのか!?」
「いえ、そんなことは……」
「いいか、よく聞け! これは僕にとって大切な一冊なんだ! これを読めば、僕も立派なウンチになれるんだ!」
客は涙目になっている。かなり切羽詰まっている感じだ。
しかし困ったなぁ……。
「お願いします! お金なら払いますから!」
「あー、えっと……」
どうしよう……。
「お願いします! これが無いと生きていけないんです!」
「はぁ……。じゃあ、特別ですよ」
すると客は嬉々としてそれを買い、大喜びで帰っていった。
それからしばらく経ったある日のこと。あのウンコ本の彼が来たのだ。
彼はニコニコしながら私に近づいてきた。
「こんにちは。先日はありがとうございました」
「いえいえ、とんでもない」
そして彼は私の手を握りながら言った。
そのとき彼からウンコの匂いがすることに気付いた。
「どうですか?立派なウンチになれたでしょ」
「えぇ、まぁ……」
「これからも頑張りますよ」
彼は爽やかな笑顔を見せ、去っていった。
うんこになりたい人もいるんだよ
作品